次に専門的になるけど、前立腺は解剖学的に内腺と外腺に分けられます。
(前立腺の超音波検査や特にMRIではこの2者を分けて見ることができます。)
前立腺肥大症は内腺が肥大してきたもの(外腺は圧迫され薄くなる。)で、
前立腺癌はおもに外腺から発生するんだ。
症状は
1.前立腺が大きくなると膀胱を刺激して頻尿になる。
(特に外界からの刺激が無くなる夜間に症状が強く出て、これを夜間頻尿といいます。)
2.次に前立腺が中を通っている尿道を圧迫して尿の勢いが悪くなる。
これが進行すると尿が出きらなくなり(残尿、て言うんだ。)、
最終的には尿が出なくなっちゃうこともあるんだ。
年をとるとそれだけで尿の勢いが悪くなるわけじゃないんだね。
##まとめ
*トイレが近くなった。(特に夜間)
*おしっこの勢いがなくなった。(尿勢の低下)
*おしっこに行ってもすぐに出ない。(排尿遅延)
*おしっこに時間がかかる。
*おしっこをし終わってもなにか残った感じがする。(残尿感)
こんな症状が出たら泌尿器科に受診してください。
##前立腺肥大症の薬
*α−Blocker(ハルナール、バソメット、エブランチルなど)
尿道の抵抗を減らして尿の出をよくする。
*植物・アミノ酸製材(エビプロスタット、パラプロストなど)
尿が出やすくなるようです。
*抗アンドロゲン剤(パーセリン、プロスタールなど)
男性ホルモンを押さえて前立腺を小さくする。
症状は前立腺肥大症と違い初期には割とでにくく、有っても軽い前立腺肥大症の症状ぐらいなんだ。
だから発見が遅れがちで、転移してから発見される例がまだまだ多いんです。
転移はほとんどが骨で、腰が痛いとか足が痛いとかいろんな骨に転移するんだけど、
老人性の”骨粗鬆症”なんて言われて治療が遅れることもしばしば有ったりするのが困りものなんですね。
診断はちゃんとした泌尿器科医じゃないと難しいから、心配なときは泌尿器科に受診してみるのが一番です。
*画像診断(超音波検査、MRI)
画像診断で腫瘍の大きさを断定できないのが困り者。
でも、腫瘍があった場合の周囲への浸潤を調べるのには重要です。
*直腸診
お尻の穴から指を入れて直接前立腺を触ってみる検査です。
昔はこれしかなかったのだから判った時はもう大変!
でも、一番簡単で、癌の広がり具合も判ります。
ただ、触って判る時にはStageC以上ですね、ほとんど。
病期とは癌の進行具合を示すもので、一般的にはStage分類を使います。
Stage A;Stage Aは別名、遇発癌とも言って、前立腺癌の診断が無い状態で前立腺肥大症として
前立腺の手術を行い、その摘出標本から癌細胞が見つかった状態のものです。
ただし、癌細胞が見つかった後、転移検索を行って転移が認められた場合は後記のものになります。
Stage B;前立腺に限局した腫瘍。
Stage C;前立腺の被膜まで進展した腫瘍。
Stage D;D1が所属リンパ節転移を認めたもの。D2は遠隔転移を認めたもの。(骨転移など)
前立腺癌は男性ホルモンに影響されるため手術治療が不可能な場合、
(高齢の場合や骨などに転移がある場合)はホルモン療法を行います。
しかしホルモン療法では癌が治ったわけではなく、制癌された状態(癌が寝ている)になるわけで、
ホルモン不応性に変化してくれば、再び増大して来ます。この場合、再発とは言わずに再燃と言うんです。
再燃までの期間はまちまちで、長い場合は10年以上、制癌できるんだ。
あと、ホルモン治療を行うと100%インポになっちゃったんだけど、
最近出たあの有名なレイの薬が効くこともあるそうです。(^^)v
ホルモン療法の内容は
A.男性ホルモンを出さない。
精巣を取ってしまうか(虚勢と言う)、男性ホルモンを出さなくするする薬を月1回注射する。
B.男性ホルモンを吸収しない。
飲み薬の内服。
C.女性ホルモンを投与。
点滴とのみ薬が有ります。効果は有るのですが、点滴の方は副作用(心血管系異常)で死亡することが多く、
注意が必要です。
AとBを組み合わせた治療が今は中心です。(TABとかCABとか言います)
2.放射線療法
StageB,Cでは局所に放射線療法を行うことが有ります。
千葉県では重粒子線という、特殊な放射線が使えて、結構良い結果を出しています。
近くにお住まいの方は相談してください
3.化学療法
前立腺癌では基本的に抗癌剤は効果が少ないんですが、他の治療が利かなくなった場合や、
副作用の少ない内服薬(UFTなど)を使うことも有ります。
4.手術療法
Stage B、Cで局所の治療として前立腺全摘術を行います。
手術は前立腺を膀胱、尿道から切り離し、膀胱と尿道を再吻合するわけですが、
前立腺周囲は非常に血管に富んでいて結構出血することがあったり、尿道と膀胱の吻合部位が
骨盤の奥であるため技術的にも難しい手術です。
(前立腺肥大症の前立腺摘出術は前立腺の外腺を残して内側だけを取ってくるので、
尿道・膀胱の吻合など行わないから比較的簡単なんです。)
前立腺全摘術の前にホルモン療法を先行して行うことを「ネオアジュバントテラピー」ど言って、
腫瘍の縮小が期待でき、行われることも有ります。
手術の合併症として排尿異常(尿失禁、排尿障害など)、インポテンツ、
縫合不全(尿道と膀胱の吻合部より尿がもれる)などがあります。
昔は、マーカーといってもPAP(前立腺酸性フォスファターゼ)やγ−sm(ガンマセミノプロテイン)
を使っていて、イマイチて感じだったんだけど、今、一番使われているPSAはなかなかの優れもの。
前立腺癌はホルモン療法が結構効くんだけど、やっぱり完全に癌とおさらばするのは早期に発見して
手術でとっちゃうのが一番なような気がするんですよ。
(この辺のところは主治医の考え方も有って、一概には言えませんが)
前置きが長くなったけど、PSAの正常値は、4以下と言うことになっています。
(と言ってもPSAの測定方によっていくつかの値の違いが有って、
ここで言う4と言う値は、世界で一番使われているタンデムRと言うキットの値です。)
なんで「なっています」なんて書き方をしたかというと、4以下でも絶対癌がない訳じゃないし
4以上だと癌が有る、と言い切れる訳でもないんです。
但し、それでは困っちゃうので、一般的に4以下は安全、4から10までがグレーゾーン、
10以上が危険と考えるのが多いようです。
ところで、このグレーゾーンの扱い方が一番難しくて、癌の有る可能性も有るし、無い可能性も高い。
結局こういう場合は、それ以外の検査を参考にするか、とにかく組織を採って検査する(前立腺生検)わけです。
PSAが4を超えたらとにかく生検をすれば早期の前立腺癌は見つかりやすいですけど、
問題無い人まで検査する頻度が高くなっちゃう。
だから、この辺は、患者さんの状態や考え方なんかを踏まえて判断するようにするのが一番と思います。
でも、4を超えたら絶対に生検するんだ、というのも間違っているわけではなく、十分に正しいと思います。
あと、前立腺癌以外でも、PSAが上昇するものとして、
前立腺炎、特に急性前立腺炎では100近くまで上昇することもあります。
それに、射精後や前立腺マッサージ(風俗を想像しないで下さい。)の後でも上昇します。